時計産業や、医療機器、計測機器など、長野県には精密機械産業が集まっています。どうして?なぜなの?きれいな空気や水の存在は精密機械産業にとって絶対条件って言われているけれど、それだけなの?長野県に精密機械産業が根付いた理由は、他にもあるのかな?今回は、セイフティレコーダ®を製造いただいている多摩川精機さまにおじゃましていろいろ聞いてきちゃいました♪
トヨタの「プリウスを代表とするハイブリッドカー搭載の角度センサは、世界シェア90%、電車用角度センサ、エレベーター用角度センサは世界トップシェア。宇宙関連機器ではロケット・宇宙ステーション等に搭載する各種機器、回転センサ、駆動用モータ、その他の制御起動装置を製作し提供しているんだ。(これはほんの一部のご紹介!他にもたくさんスゴイ製品があるんだよ!)
来年で創立80年♪
戦前から計測器にこだわってきた会社さんだよ。
現在の本社は長野の飯田にあるけれど、創立当初は東京蒲田に本社があったんだよ。ボクの棲むデータ・テック本社も蒲田だよ。
昭和13年3月3日に東京蒲田の多摩川の近くに創立したことにちなみ、多摩川精機株式会社という社名になったんだって。
今回おじゃました長野県飯田市の本社と第1事業所は、航空・宇宙・防衛関連機器、システム関連機器の設計・製造を手がけているところ。三角屋根の木造の建物は、昭和17年に造られた建物で、坂道に美しく並んでいて歴史を感じる建造物。その中で超先進的な技術開発をしているなんて誰も想像できないね。
構内の道路は真っ直ぐにのびていて見通しが良くなっているよ。産業スパイが侵入してもすぐに発見できるね。
1942年(S17)創業者の萩本博市さんが郷里の地域振興を目的に、多摩川精機株式会社 飯田工場を設立したんだよ。
レトロな外観の内部では、世界に誇る最新の技術開発をしているなんて、かっこよすぎるよ!
完成当初からの床や天井を、大切にお手入れして今でも美しい外観をそのままに使っているんだよ。
今回特別に、萩本範文副会長にお話しを伺うことができました。 萩本副会長は、とても優しくて、穏やかで、ユーモアのある素敵な紳士ですが、3代目社長時代に、先代の2代目社長が開拓したマーケットを、それぞれの分野で拡げて売上を大きく伸ばしたという凄いかたなんです。そんな超偉いかたに直々にお話いただいちゃいました!
多摩川精機の原点となった油量計だよ♪
人工衛星、宇宙ステーション、ロケットなどで超精密角度センサが活躍しているんだよ。
平成28年に「宇宙用高精度角度検出器の開発」で宇宙航空研究開発機構さんに表彰されました♪
バイオトロニクス研究所では標的タンパク質の精製や、その他のナノテクノロジーの研究をしているんだよ。
他にも高度な技術の製品がたくさん。構内の天井クレーンフックの振れを検出して制御、港湾荷役のコンテナクレーンでの振れ検出と制御、ダムクレーンの振れ検出、船体の振れを検出し水中翼をアクティブに制御し乗り心地を改善、電車のカーブ時に傾きを検出して制御、自動車運動計測、軽飛行機の飛行姿勢を検出、ヘリコプター搭載カメラの安定化、通信用アンテナの制御などなど、ジャイロを使った技術だけでも紹介しきれない程あるんだよ!
『歴史館』は多摩川精機株式会社の歩みと工業の歴史を伝える資料館として平成10年3月に建設。
平成27年11月に現在の場所に移設したんだって。
創業者の萩本博市さんは、長野県下伊那郡泰阜村に生まれ教師を志し上京し教師となったが、その後、工業界に転職。
昭和13年東京蒲田の多摩川近くに会社を創立。
故郷信州の産業発展は、農林業ではなく精密機械工業へ転換することだと昭和17年に飯田工場を建設。
飯田工場は生産拠点としてだけでなく、人材育成、先端技術開発にも重点を置き、今日の地域工業振興の基盤をつくったんだ。
歴史館の入り口を入るとすぐに、多摩川精機の原点である戦闘機に使われた油量計が展示されていたよ。
これが技術の原点だ!
多摩川精機の原点となった油量計
GHQの破棄命令から逃れて、たった1台残った本物の計器!
工員募集の内容が現代にも通用するような内容だよ。
福利厚生もしっかり明記されていてビックリ!
元教師だった創業者の萩本博市さんは、技術者育成の為に東京蒲田の会社の側に学校を設立。青山師範学校や、東京工業大学などから先生を招いて講義をし、女子には化粧・華道・茶道など、あの有名な美容家の山野愛子先生を迎えて教えたんだって。優秀な技術者であり、熱心な教育者でもあったんだね。
主な展示製品を紹介するね♪
宇宙の神秘を探るアンテナ。そのアンテナの命は角度精度です。野辺山にある宇宙電波望遠鏡の角度検出に使われている超高精度多極シンクロの技術は絶対の信頼性を誇っているんだよ。
太陽光採光伝送システム『ひまわり』は、太陽の動きに合わせて向きを変える花「向日葵」に似ていて、太陽を自動追尾してビルの中にも太陽光を導く集光システムだよ。蜂の巣のようなフレネルレンズと光ファイバで地下室にも太陽の光を届け、野菜の栽培もできるんだって。
えーっ!これも多摩川精機さんの製品?このリールを小気味よく回転させているのは特殊ステップモータ。この他にも電動パチンコで玉を打ち出しているのはシンクロナスモータ。これらゲーム機の心臓部はミサイル技術がなければできないハイテクマシンなんだよ。(※本体はゲーム機器メーカー製造です)
ハイブリッド車のガソリンエンジンと電気モータを音もなく切り替えるために必要な角度センサは、世界シェア90% (展示はトヨタ『プリウス』のエンジン部分♪)
これが世界シェア90%の角度センサだよ♪
世界を走るほぼ全てのハイブリッドカーに搭載されている、多摩川精機のセンサ。それがVR(可変磁気抵抗)型レゾルバ「シングルシン」。 ハイブリッドエンジンは、ガソリンエンジンと電気モータと発電機が搭載され、状況に応じて切り替えながら走行している。全く特性の異なる3つの回転機の回転角を瞬時にとらえ、切り替えのタイミングを作っているのが角度センサの「シングルシン」なのだ。ハイブリッドカーを運転するとき、ボクたちはエンジンとモータの切り替えを意識することはない。でも、もしこのセンサがなければ、動力が切り替わるたびにガクン、ガクンという強い衝撃が起こる。ガソリンエンジンでの快適な安定走行を知っている者には、いくら「エコ」だからといわれても納得できないかもね。動力が切り替わっても、それを感じさせないほどスムーズな走行を実現させたのが多摩川精機の「シングルシン」。多摩川精機の技術がなければ現在のハイブリッドカーは誕生しなかったかもね。
長野県で、時計産業、医療機器、計測機器などの精密機械産業が盛んな第一の理由は、きれいな空気ときれいな水があることなのかな。でもただそれだけじゃないよね。長野県に精密機械産業が根付いたもう一つの大きな理由は、長野県民の勤勉さと手先の器用さじゃないのかな。
長野県は、夏は涼しくて過ごしやすいけど、冬は厳しい寒さが続くね。その厳しい環境が、勤勉で我慢強く、器用で真面目な県民性を育てたのかな。工場で働く人たちは、とても真面目で、手先が器用で、粘り強い性格の地元の人たち。だから長野県の人たちは、いまでも世界に誇る日本の精密機械産業を支え続けているんだと思うな。地元を大切に思う心と、新しいモノを生み出していこうという心意気を持っていた多摩川精機の創業者である萩本さんは凄い人だね。そしてそれを受け継いで、来年は創立80周年。長い歴史の中で常に新しいモノを探求しつづけている多摩川精機さんってやっぱり凄い会社さんです。多摩川精機さんは製造業の大先輩。心から尊敬します!